波乱

「はぁ…はぁ…」
静かな部屋に響き渡る息。なんだか部屋が暑く感じる。 たぶんそれはの熱のせいだ。昨日の夜微熱が出て、今は39度の高熱。 いつもニコニコしてるのすごく苦しそうな顔は、とても見ていて辛い。 こんな感情が自分にもあったのかと、自分で驚いた。 骸様は今日雲雀とかいう奴の情報を集めにいって、ここにはいない。 そして俺と犬は8位狩りをするようにと言われている。 だけど、こんな状態のを一人にするわけにはいかないよな…。 犬に病人の世話は無理だ。きっとうるさいだろうし。 だから8位狩りは犬一人に任せ、俺はの看病をすることにした。
「はぁ…はっ…ちっ…さ」
「何?」
「…はぁ……ど、こ…?」
「ここにいるよ」
必死に俺を捜しているように見えた。きっと熱のせいで視界がよく見えないのだろう。 さっきから何度も俺は同じことを言ってる。5分経つごとに俺を捜しだすからね。 ずっと声を出していればわかるだろうけど… だからと言ってこんな状態じゃあ、話しをするのも辛いだろう…。
「よか…った…」
苦しそうなのに、嬉しそうに笑う。そんな無理に笑わなくていいのに。 そりゃの笑顔は好きだよ。だけど…こんな苦しそうに笑顔を向けられても、俺の心は痛むだけ。 だから…だから早く治ってほしいと思った。それならいくらでも笑ってほしい。 何度でも笑いかけてほしい。
「…、ちょっと薬持ってくるから待ってて」
俺が椅子から腰をあげると、弱々しい手と声がとんできた。
「…ぃっ……や…」
「…すぐ戻るから」
「…ひと、り…は…いゃ…」
「……(はぁ…)」
そんな顔されたら離れられないじゃん。薬なんて1分もあれば取ってこれるよ。 だけど、今の愛には何を言っても無駄だろう。が寝付くまで傍にいてあげるよ。
「わかった。ここにいるから少し寝なよ」
「う、…ん」
がまた手を弱々しく差し伸べてきた。「手繋いで」って意味だろうけど。 俺はその手をそっと取って、優しく握った。それで安心したのか、 はゆっくりと目を閉じ、数分で寝息を立て始めた。

*****

「………」
「目が覚めた?」
私が目を覚ました時、隣には静かに本を読んでる千種がいた。 寝たせいか、さっきまでの頭痛と熱は少し引いたようだ。
「具合はどう?」
本を閉じ、千種の視線が本から私へと移る。 本を置いた机には、少しだけ残った水とカプセル薬のゴミが置いてあった。 あれ…?私薬なんて飲んだっけ?覚えてないけど…(それで具合良くなったのか!)
「うん、大分よくなったみたい」
「そ、ならよかった」
「あの…さ、千種が薬飲ませてくれたの?」
「…あぁ……寝た後も苦しそうだったから」
「そっか…ありがと」
「……」
「…どうかした?」
「わっ…!」
俯いていたら千種が心配して覗き込んできた。 それから「泣きそうだよ」って言われて、心臓がドキリとした。 そう、今まさに私は泣き崩れそうだった。さっきまで私は夢を見ていた。 闇の中に独りぼっちで。犬も…骸さんも…そして千種もいなくて、 淋しくて、苦しくて…。死んでしまいたいと思うほど怖かった。
「ごめん…何でもないよ。ちょっと変な夢見ただけ」
「……どんな夢?」
「……」
「…?」
「みんなが……千種が…私の前からいなくなっちゃった夢…」
「………バカ」
「…え…って、うわ!!」
気づけば千種がベッドに乗り上がってきてて、私の頬を両手で挟んだ。
「千種…」
を一人にするわけないでしょ」
「ホント…?」
「…嘘だと思うの?」
「…ううん」
出てきそうになる涙を必死に堪えて、私は精一杯笑った。 すると千種も(微妙に)笑ってくれた。そのまま千種の顔が近づいてくる。 私もそれを受け入れるつもりで目を閉じかけた…けど!ふと自分の状態のことを考えた。
「だ、…めだよ千種!」
「……なんで?」
あと数pで唇が重なるということろで、私は千種の胸を押し返した。 千種はちょっと不満そうな顔をしている。 い、嫌なわけじゃないんだよ!?だってさ…
「いや、だって…」
「何?」
「…風邪…移っちゃう…じゃん」
「……」
「だから今はがま、っんん…!」
ダメだって言ったのに。 そんなのどうでもいいよ、みたいな顔して千種は私にキスをした。 軽く触れるだけの優しいキスを。
「…!」
「いいよ」
「…え?何が…」
の風邪ならもらってあげる」
まったくこのメガネは!! 表情を変えずにこんな甘い台詞を言うのは反則だよ。

よくある風邪ネタ(笑