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はぁ…… 疲れてもいないのにため息が出る。 今僕はものすごく機嫌が悪い。 それが何故なのか、僕にもわからない。 でも数日前から、変な気持ち。 この気持ちがなんなのかわからない。だからイライラする。 ****** 一週間前 僕は風紀の仕事を終え、応接室へと向かっていた。 その通り道には満開に咲いた桜の花。 ヒラヒラと散ってゆくたくさんのピンクの紙。 まるで小さな虫が群れているようで、なんだか不快な気持ちだ。 ふと気づくと、少し先の桜の木の下で気持ちよさそうに寝てる少女がいた。 おかしい。今は授業中のはずだ。…サボリ? 僕はそっとその少女の近くへと歩み寄った。 気持ちよさそうに寝息を立てて、起きる気配は全くない。綺麗な顔…。 その瞬間、雲雀はハッと我に返った。綺麗?この子が? ど う か し て る 。 頭を左右にブンブンと振り、眉間にはシワが寄る。 だけど、やっぱりその少女が気になり、ついつい視線を奪われてしまう。綺麗…か……。 僕はそっと少女の頬に触れてみる。 それは僕の冷たい手とは対照的で、柔らかく、温かかった。 何故こんなにも違うのだろうか…。 「ん…んん…」 頬に触れたら少女がうっすらと目を開けた。 さっきまで近くで物音立てても起きなかったのに…。 「…んー…?」 「おはよう」 「あー…おはよう……お?」 「何してるのさ」 「ひ、雲雀さんっ!!!!」 あー。やっぱり僕のこと知ってるんだ。 校内で僕を知らない奴なんてほぼいないだろうけど。 「君はここで何をしてるの?サボリ?」 「サボリです!!桜があんま綺麗だったから…見に来たんですけど…」 「寝ちゃいました!」と笑顔で答える少女。 何故こんなにも笑顔で話すのか、僕にはわからない。 きっと普通の奴なら、僕が「サボリ?」と聞いた時点で顔を青くするのに。 この子は本当に僕が「風紀委員の雲雀恭弥」だと知っているのか? それとも女だから何もされないと思っているのか? 「…君、僕が怖くないの?」 「怖い?何でですか?」 「……」 なんでって…こんな普通に返答した奴は始めてだ。 僕の方が言葉を詰まらせてしまった。不快だ。 「授業サボってただで済むと思うのかい?」 「んーまぁーいけないことですけどー…雲雀さんだってサボリじゃないですかぁ」 「……」 何なんだこの子。 今までこんな普通に僕と話した奴なんていなかったのに。 僕を不快にするし。……なのに何故か惹かれてる自分がいる。 「君、名前は?」 「 っていいます」 「ふーん。…ね…」 「はい」 ニッコリと笑って答える。本当によく笑う子だな…。 「じゃあ、適当なところで授業に戻るんだよ」 「はい!」 サボリを見つけたらすぐ咬み殺す。それがいつもの僕だ。 だけど、今回はそれが出来なかった。 相手が女だから、とかじゃなくて、もっと別の何かが…。 ***** あれから今日まで、僕はを目で追うようになっていた。 今もまた、誰と話してるわけでもないのに、 ニコニコと歩いているに視線は奪われる。 そんな僕に気づいて、ニコニコしていた顔は笑顔に変わり、こっちに走ってくる。 群れるのは嫌なのに。 誰かと話をするのは嫌いなのに。 そんなが可愛らしくて、つい僕は相手にしてしまう。 「雲雀さーん!」 「何?…ていうかうるさいよ。聞こえてるから大声出さないでよ」 「えへ、すみません。良かった…間に合ったみたい」 「何か用?」 「はい!雲雀さんとお花見しようと思って!」 「花見?」 「はい!」 日も暮れてきて、生徒のほとんどは既に帰宅している 僕は委員会の仕事でいつも遅くまで残ってるから、帰るのは遅い。 それを知って、は今までずっと僕を待っていたようだ。 「花見って…今から?どこでするの?」 「ここですよ、ココ!」 「…学校?」 地面を指さしながらニッコリと笑う。 はぁ。まったく、 そんな顔を向けられたら断れないじゃないか。 「しょうがないな」と一言言うと、は一層嬉しそうに僕の手を引いた。 頬を触った時に感じたのと同じ感覚が、の手から伝わってくる。 感覚も違えば、大きさも、温かさも、全てが僕と違う。 女っていうのはみんなこういうものなのか…? 今まで、こんな気安く僕に触る奴なんていなかったし 自分から相手に触ることなんて、したくもない。だから知らなかった。 でも、この感覚が心地よく感じるのは、相手が「女」だからではなく「」だからだ。 「この木…」 「え!?覚えてるんですか!?」 「が寝てた木だろ?一番立派だったからね…この木」 「そうなんですか」 そう。この木は僕が初めてと出会った木。 僕が初めて…「綺麗」や「温かい」といった感覚を味わった…。 「ここで…雲雀さんと一緒に桜を見たかったんです」 の顔を見たら言葉が出てこなくなってしまった。 いつも元気で、緊張感の欠片もないが赤くなっていたからだ。 でも照れるのか…。初めて見るの顔を、僕はまじまじと見つめていた。 「……もうすぐ…」 「?」 「もうすぐ卒業ですよね、雲雀さん」 静かに桜を見ていたが口を開いた。 その声はどこか、悲しそうで、涙ぐんでいた気がする 赤くなっていたと思えば、少しずつ表情が崩れていく。 「だから…雲雀さんがいなくなっちゃう前に……っんん」 そう言いかけたの唇に、僕は自分のを重ねた。 「ひ、ひばっ、雲雀さ…ん…っ」 さっきとは比べ物にならないほどの顔は真っ赤だ。 そんなが可愛くて、愛しくて…。 僕はの耳元に顔を近づけ、そっと呟いた。 「君が気に入ったから、卒業は来年にするよ。そうすれば一緒に卒業できるだろ?」 「えぇぁっ、え、あぁあの、でも、そ、そんなこと…」 「それとも何?早く卒業してほしいの?」 「ちっ、違いますよ!!!!!」 「じゃあもっと素直にしなよ」 「…まだ…卒業しない、でください…っ!」 「(クスッ)」 僕は俯いているの顎を掴み、上を向かせ、また口を付ける。 「その代わり、には僕の彼女になってもらうよ」 |