疑惑

「悪りぃ…今日はちょっと…」

最近こればっかり。

どこか行こうって誘っても、いつも断られる。

それがずっと続いてて、不安で仕方がなかった。

どうしても宏海が無理なら…と悠を誘おうとすると、宏海が不機嫌な顔する。

そんな顔されたって…宏海が付き合ってくれないからじゃん。

ここ一週間くらいずっと誘ってるのに…。

んだかすごく悲しくなってきた…。



それから数日。宏海が珍しく自分からに寄ってきた。



小声で机に伏せているに声をかける。

怠そうに顔を上げたは、一瞬驚いた顔をし、すぐに歪んだ表情へと変わった。

宏海から目線を外し、突然席をたった。

「ちょ…っ!」

廊下へ飛び出したを、追ってくる足音。

だが気にせずに屋上へと走っていく。

屋上の扉をばたんと開いたところで、後ろから片腕を強く掴まれた。

「おい、待てよ!なんで逃げるんだよ!」

「……なの…?」

「は?」

「宏海は私のことどう思ってるの?」

「な、なんだよいきなり」

あわてふためく宏海。だがが望んでいる回答は出てこない。

なんで何も言ってくれないの?

好きなら好き。嫌いなら嫌い。たった一言だよ…?

「もういいや。ゴメン宏海。何でも、…ないよ」 >泣きたいのを必死に堪えて、精一杯笑った。

そうだよ…別に付き合ってるわけじゃないんだもん、ね…。

宏海の横を通り過ぎ、来た道を戻ろうと足を踏み出したが…

先程と同じように、強く腕を掴まれた。だけど今度はそれだけではない。

掴まれた手は後ろに引っ張られ、思わず体が反転する。

するとそこには宏海の胸があり、気付けばは抱きしめられていた。

「こ…」

「なんで俺を避けんだよ…」

「さ、けてな、んか…」

「……」

沈みかけたの顎を持ち上げ、自分の唇をのそれに重ねる。

「ん…」

「避けてる…だろ?」

「…避けてるのは宏海の方じゃないの?」

「は?!」

は顎にかけられた宏海の手を弱く払いのけ、視線を泳がせる。払われた手が妙に冷たい。

「何言ってんだよ…」

「だって!いつもいつも、用事があるからって、私のことなんか…っ」

「っ違げぇよ!!」

思わず力強くの肩を握りしめる。痛みでの顔が一瞬歪んだ。

「あ、悪りぃ……でも違うんだ…」

そう言うと、宏海はズボンのポケットに手を入れ、何かを探し始めた。

ちょっと照れた様子での前に差し出されたのは、小さな箱だった。

「こ、れ…」

「お前これ欲しがってただろ?あん時は金なくて、買ってやれなかったからさ…」

を驚かせようと、内緒でバイトをしていたらしい。

「喜ばせるつもりが、辛い思いさせちまったな…」

申し訳なさそうに笑いながら、の頭を優しく撫でる。

すごく温かい。私はこんなにも温かい宏海を、信じることができなかった。

そんな自分が嫌で、そんな自分に優しく接してくれる宏海に申し訳なくて…。

の目から再び涙が零れ落ちる。

「お、おい…っ!」

「ごめ、…こうみ…ごめん…っ」

宏海の胸に顔を埋めて何度も囁いた。

「私、何にもいらないから、宏海がいてくれればいいから…っ」

…」

「お前から離れるつもりはねーよ」

唇が触れて、小さく笑う。

END