特別

2月14日
「おいおい、今日はバレンタインだぜ」
やけにテンションの高い太臓。 まぁーこいつのことだ。 チョコをたくさん貰える気でいるんだろう。(無理だろうけどな) そんな太臓を見てなんかワクワクしてる悠。 ホントにこいつには従者としての意識があるのだろうか。
「何をぼーっとしている、宏海」
「わかった!チョコがもらえないと思ってしょげてんだな!?」
「んなわけねえーだろ」
「ホントかぁ〜?」
ニヤニヤといやらしい目つきでジロジロとこっちを見てた太臓。 俺が無言で目を逸らすと、太臓は悠を連れて女子にチョコをもらいにいった。
やっと静かになった…。
「おはよ」
「…あ、おはよう」
一つため息をついた時、背後から声がした。 だ。調度いいタイミングで来たもんだ。 もう少し早かったら太臓に襲われてるだろうからな。
「宏海宏海!昨日ね、チョコ作ったんだよ?!」
「自分でか?」
「うん!ちゃーんと宏海にあげるつもりで♪」
「そ、そうか…」
照れ隠しにから目を逸らした。 するとはガサガサと鞄に手を突っ込んでチョコを探し出した。 その時。 「はっけーーーーーーん!!!!!!」
「わっ」
太臓は勢いよくの背中に飛び付いた。
〜チョコくれよぉ〜」
「た、太臓」
「なんだ、もう帰ってきたのかよ」
「結局誰にももらえなくてな。あとはしかいないんだ」
「…まったく…しょうがないな」
はまた鞄を探りだし、小さな包みを3つ出した。
「はい、これあげるから元気だしなよ」
「よっしゃー!のチョコゲット!!」
「これは悠にだよ」
「すまんな。頂く」
「宏海も…はい!」
「ああ、サンキュ…」
ちょっと残念だった。 のことだから、悠や太臓にもあげるだろうとは思ってた。 自分だけはちょっと特別なのをもらえるかと期待してる自分がいた。 だけど俺がもらったチョコも、悠や太臓にあげたチョコも同じ物。 バカだな。何自惚れてるんだ。俺は。

*****

長い授業も終わり、生徒が少しずつ減っていく教室。 太臓はまだ諦めてないらしく、悠と一緒に下校中の女子に付きまとってるようだ。 俺はなんだか動く気になれなくて、しばらく誰もいない教室の窓から夕日を眺めていた。

ガラガラガラ

「宏海…?」
ドアが開く音がして振り返ってみると、そこにはがいた。
「帰らないの?」
「ああ…なんか怠くてな」
「………あの…さ…」
「あ?」
そう言いかけたは、朝と同じように鞄をガサガサと漁りだした。
「こ、これ…」
差し出されたのは、ちょっと大きめの、ハート型の箱だった。 もしかしてこれって……
「……チョコ…か?」
「うん…朝渡そうと思ったんだけどさ、太臓達がきちゃったから…… 太臓達の前で、宏海だけに本命のあげたらうるさいでしょ」
てへへ、と笑うの顔は、夕日のせいというのもあったが、確かに赤くなっていた。 そんなを見て、俺の心臓はドクンと大きく跳ね上がる。 知ってはいたが、改めて「本命」と言われると、だんだか照れくさい。 俺はしばらく、もらったチョコを眺めていた。 俺が何も言わなかったからだろうか。 はそわそわし出して、さっき以上に顔が赤くなる。
「じ、じゃあ私帰るね!」
急ぎ足で去ろうとする。 咄嗟に俺はそんなの腕を掴んで引き寄せた。
「わっ!!こ、こーみ…!?」
「サンキューな」
「……うん」
俺より一回りも二回りも小さいは、腕の中にすっぽりと収まる。 すごくいい匂いで、細くて、もう少し力を入れたら折れてしまいそうだ。
「俺も帰る」
「じゃあ…一緒に帰ろ」
「ああ」
は顔を上げると、にこりと笑った。 たまには自惚れるのもいいよな。

▼おまけ▼
「あ!宏海!!」
「お前らまだやってたのかよ…」
「だって悠は4つももらってんだぞ!?なのに俺は0!!」
「まぁまぁ王子。私のを2つあげますから、今日はこれくらいにしましょう」
「しょうがねーな…そういえば!他の奴にチョコあげたのか?!」
「ん?あげてないよ♪」
「じゃあ本命のチョコは俺(達)ってこと!?」
「そういうことかな……ね、宏海」
「あ、ああ」
「やっりぃーー♪♪よし!悠帰るぞ!もうち寄っていけよ!」
「うん!そうする!!宏海も行こ!」
「ああ…」
「よーし!じゃあ!うちまで競争だ!!」
「おーし!負けないよー!!!」

「……宏海」
「なんだ?」
「…にチョコもらったのか?」
「はっ!?お、お前だってもらったじゃねーか」
「あれじゃない。その後だ」
「…知ってたのか?」
「さっきのお前の顔を見ればわかることだ」
「なっ…!」
「顔、赤くなってたぞ」
「……っるせぇ」