「はぁ!!?」
驚きのあまり、素っ頓狂な声を出しちまった。
そんな俺に驚いたのか、シモンもビクリと体を震わせた。
「なっ…何で俺なんだよ!」
「だって…アニキには聞けないし…キタンなら上手そうだな、…って…」
恥ずかしそうにうずくまるシモン。
その様子を見て、キタンは困ったように頭をガシガシとかいた。
「キスの仕方っつったってよ…」
「俺、上手くなりたい…んだ…」
照れつつ困ったような顔をするシモン。
ああ、そういうことか。あいつのためなんだな。
シモンがこういう顔をすん時ぁ、あいつのこと考えてる時だ。
「いいのかよ…他の男にそんなこと頼んで」
特にあのヤローは俺に突っ掛かってくるからな。
見つかったらただじゃ済まねぇよ。シモンもそうだが、主に俺が。
「や、やるフリでいいんだ!お願い…っ」
キタンの服の裾を掴み、泣きそうな顔で見つめてくる。
まったく、どうも俺はこのてのガキに弱いらしい。
妹(みたいな奴)が泣いているとほっとけねェんだよ。
「わーったわーった!やってやるからそんな顔すんなよ」
たったこの一言でシモンの顔が花でも咲いたみてぇーに明るくなる。
やっぱガキゃあー可愛いな。
しかし…キスの仕方が知りたいのに、するふりって…何の練習すんだ?
顎に手を当てて一人で考えていると、くいっと服の裾を引っ張られた。
「ん?」
「あ、あの…俺どうすれば…?」
おっと、いけねぇ。考えたって仕方ねーか!
とりあえずシモンが満足するまで付き合ってやるか。
「わりぃわりぃ!んじゃこっち来いよ」
ちょいちょいと手招きをすると、てけてけと小股で歩いてくる。
可愛い…こいつホントにヨーコと同い年か…?ぜってーもっと下だろ!

歩み寄ってきたシモンの肩にそっと手を置いてみる。
たったそれだけなのに、シモンは大きく肩を震わせた。
「おい、する真似なんだからもっとリラックスしろよ」
「う、うん…」
返事はしたものの、シモンは一目見てわかるほどに緊張していた。
自分で頼んできたのに、ここまで緊張するとはな…。
「まず一つアドバイスだ」
小さくため息を吐いて一言いうと、シモンがパッと顔を上げた。
「背伸びしろ」
「へ…?」
「お前ェちっせぇからよ、腰いてぇわ」
「ぅ…」
小さいという言葉に反応したのか、シモンは俯いてしまった。
あー…こいつにチビっつーのは禁句だったか…
「まぁ気にするこったねぇよ!これからデカくなりゃあいいんだからよ」
「う、ん…じゃあ…こう?」
爪先立ちになってキタンにしがみつくシモン。
やべぇ…コイツ可愛いじゃねぇか…
「キタン?」
「あ、ああ…そんな感じだ」
「このあとは…?」
「そうだなぁ…俺の首に腕回してみろ」
言われるままにシモンが腕を伸ばす。
キタンはシモンが届くように少し屈み、その腰を手で支えた。
そうすることで二人の距離は自然と近くなる。
シモンの顔…真っ赤。
「あとはこのまま目ぇ閉じて待ってりゃいい」
するとシモンは視線をキョロキョロと泳がせ、落ち着かない様子で小さくうなずいた。
「う、うん…、ありが…」
待ってましたと言わんばかりに解かれたシモンの手を、俺はとっさに掴み、引き寄せ、唇を重ねた。
「っ!?」
「悪りぃなシモン、フリじゃなくなっちまった」
赤かった顔をまた一段と赤く染め、シモンは自分の口元をおさえた。
「お礼くらいもらったっていいだろ?カミナの野郎には内緒だぜ?」
困ったように笑い、キタンは手を振りながら「頑張れよ」と去って行った。

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同性ということに何の疑問も持たない人たち(笑