思惑

「こうみ…」
上目遣い。瞳を潤ませて宏海を見上げる小さな顔。
悠がこの体制に入るのは誘ってる証拠だ。だけど……
「今日は乗ってやんねー」
悠は自分から誘う割には、最終的に俺をケダモノ扱いする。(その通りなんだが…)
だからたまには意地悪をしてみたくなった。
悠を拒否したら、どういう反応をするだろう。

「なんで?」
「別にィー」
「……」
「宏海…嫌、なのか?」
悲しげに瞳を揺らす。だが騙されるな、これは悠の演技だ!
いつもと同じパターンじゃねえか!
「そうじゃねえけど、…今日はしねえよ」
諦めろ、と一言吐き、宏海は悠から視線を外した。

「キス」

「は?!」
突然悠の口から出た台詞の意味がよくわからず、マヌケな声が出る。
すると悠は宏海目の前にちょこんと膝をつき、膝立ちの状態になった。
「俺はキスがしたいだけだ。別にヤるわけじゃない」
膝立ちでも、座った宏海と目線はあまり変わらない。見上げるようにしてキスを催促してくる。
「おい…」
「それならいいだろ?」
宏海が返事を返す前に、悠の顔が一気に迫りきた。
「んぅ…」
そのまま唇を塞がれる。思わず宏海の手は悠の腰を掴んだ。
引き離そうと手に力を入れれば、負けじと顔が迫ってくる。
「ん…、こうみ…」
悠は普段全く表情が変わらない。だけど、キスのあとのは違う。
頬を紅潮させ、瞳を潤ませ、溶けてしまいそうな顔をしている。
これが全ての原因なんだよ。

唇を離すと、悠は宏海の肩にちょこんと顔を乗せた。
自分の肩で息を整える小さな身体…。
その背をそっと撫でると、ぴくりと身体が震える。
これがトドメ。リミッターは全部外されるわけだ。
「前言撤回。途中退席はないからな」
ああ。今日もこうして俺は悠の思惑通りだ。

END