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授業が始まって間もなく、悠が遅れて教室に入ってきた。どうやら自習の時間らしく、生
徒は立ち歩いており、教師の姿もない。 「お前どこ行ってたんだよ」 「トイレに 行ってただけだ…」 「……」 「なんだ?」 「…トイレで…何してたんだよ」 明らかにいつもと違う。息が少しあらいし、暑くもないのに汗が滲み出ている。さら に顔もわずかだか赤みを帯びていた。宏海の表情が急に真剣になり、悠の心臓がドクンと 大きく跳ね上がった。何をしていた…か…。別に。と答えたが、信じる気はないようだ。 宏海は悠から目を離そうとしない。そうこうしている間に、担当の教師が来てしまい、話 はそのまま途切れてしまった。 放課後、宏海は早々に帰ろうとする悠を呼び止 め、体育館裏へと連れ込んだ。 「まだ何か用か?」 「さっきの答えを聞いて ねェ」 「それなら答え…「ウソついてんじゃねーよ」」 悠の肩を掴み、壁に激し く押し付ける。悠の顔が、一瞬苦痛で歪んだ。壁に押し付けても、悠は宏海のことを一切 見ようとしない。そんな悠の行動に、宏海は苛立ち始めていた。 「なんで言わねーん だよ」 「…言わなきゃならない義務もないだろ」 「……」 確かにそうだ。だ けど気になる。悠が何をしていたのか。何故あんな状態になったのかが…。悠の肩を押さ えている手の力を抜き、空いている方の手で顎を掴み、無理矢理こちらを向かせた。その ままそっと唇を重ねる。逃げ回る舌に絡み付き、根元から吸い上げると、悠の体がぴくり と動くのがわかった。 「…、ふ…っ…」 「ん…」 暴れようとする手は手で、足は足で押さえ付け、深く、深くキスをする。 「っゃ…めろ…っ」 「悠…」 「離せ…っ」 切れ切れに”離せ”と言い続ける悠。普段は自分から仕掛けてきて、なかなかやめないくせに。 顔を背けようとする悠が気に入らない。隠し事をする悠が気に入らない。無性に腹が立った。 片手で、悠の両手を頭の上で押さえ付け、空いたもう一方の手で学ランのボタンを外していく。 その間も、宏海はキスをし続けた。ボタンが全て外れ、ワイシャツのボタンを数個外したところで、 宏海の手の動きが止まった。 「悠…お前、それ…」 「……」 悠の首筋には、赤い痕が残されていた。それを見た瞬間、宏海の手から力が抜けていった。 その隙を突いて悠の手がするりと抜ける。 「誰にやられたんだよ…!」 「誰でもいいだろ…」 素っ気ない返答に、胸の辺りがチリリとした。 「もう俺とは関わらなくていい…」 「な…っ!散々人を振り回しといて…っ」 「それはお前、…だろ!彼女がいるくせに…」 「っ…」 言い返すことができない。そう。宏海には既にちゃんとした彼女がいるのだ。 こんなことしちゃいけないのはわかってる…。矢射子が嫌いなわけでもない。だけど…やっぱり俺 は悠のことが…。だがもう遅い。悠は遠くへ行ってしまった。やり直すこともかなわない。 だって、そうさせたのは、紛れも無く宏海自身なのだから。 両方手放したくない、 なんて欲張りだよな…。 |