銭湯

銭湯へきたのはいいが…何をしにきたんだろうか…。
俺は嫌々連れてこられたあげく、氷漬け。
体を温めるべきところで、体を冷やされるとはな。
そして今、ようやく氷が溶けて湯に浸かることができた。
一人寛いでいると、ガラリと音がする。誰かが入ってきたようだ。
「まだいたのか」
「氷漬けになってたからな」
現れたのは悠だった。
「太臓は?」
「女湯に人がいないと意味がないそうでな、先に帰った」
「んで?なんでお前は一緒に帰らなかったんだ?」
「さっきの湯は氷が入っていて暖まれなかったからな」
宏海の隣へ腰を下ろす。
誰のせいだと思ってんだよ、と内心思いつつも、
悠と二人で湯に浸かれて嬉しいと思ってしまっている自分もいる。
そういやぁ、あんま気にしてなかったけど、悠って…すげぇー色白ぇな…
「何を見ている」
「あ、ぃや……べ、別に…」
「俺に見惚れたか?」
「なっ!!何言って…っ」
考えていたことをズバリと当てられ、否定することができない。
すべてお見通しと言わんばかりに悠が笑う。
「俺が欲しいか?」
「っ!!」
宏海の肩に手を伸ばし体を密着させる。
慌てて引き離そうとすると、悠が耳元で何か囁いた。
「大丈夫 今ここには誰も入ってこない」
おそらく何か細工でもしたのだろう。相手はあの悠だからな。
腕を首に巻き付け、しつこく耳にキスをしてくる。
これは悠が誘ってる証拠だ。
誰も来ないとは言っても、流石にここではまずいだろ…。
そう思い、必死に悠の誘いに耐える。
「こうみ…」
耳から唇が離れ、大きな瞳がこちらに向けられる。
その顔は湯に浸かっているせいか既に紅潮し始めていた。
潤んだ瞳で名前を呼ばれ、頭の中で何かがプツンと切れる。
気付けば悠の唇に吸い付き、強く肩を抱き寄せていた。
「んっ……っとその気、になったか…?」
「…テメェが誘ったんだから、途中放棄はなしだからな」
広い銭湯の中で、卑猥な音と二人の吐息だけが響き渡った。

END