手料理

「何だ…?それ」
「見てわからないの?」
「わからないから聞いてるんだ」
「……」
目の前に出された皿の上の黒い物体。
もはや原型はなく、何なのかもわからない。
「 こんな腕では王子に食べさせるのは無理だな」
「うるさいわね。誰も太臓に食べさせる気なんてないわよ」
やれやれ、と溜め息を一つ。
席を立った悠が向かったのはキッチンだ。
「ちょっと待ってろ」

*****

「待たせたな」
キッチンへ行ってわずか数分。
いくつかの皿を持って悠が現れた。
手慣れた手つきで、皿とフォークにナイフをあいすの前に並べる。
まるでウエイターのような手際の良さに、あいすは驚くしかなかった。
「どうした?」
「あんた…料理できたのね…」
「仮にも王族に仕えている身だからな。これくらい当然だ」
確かにこう見えて悠はしっかりしている。
礼儀作法も、料理な腕も、忠実さもそれなりにある。
能力だってかなり上位のものだ。
そんな奴がなぜ太臓なんかの側近に…
「あいす?」
名を呼ばれてハッとする。
「さっきから何だ?人の顔をじっと見て」
無意識のうちに悠を見ていたようだ。
指摘されて、心臓がドクンと大きく脈打つ。
「顔赤いぞ?」
「…っ、…何でもないわ」
悠の顔が近い。身体が熱い。
顔に熱が集まっていくのがわかる。
こんなの…私らしくない。

END

悠佐渡「手料理」バージョン