黒猫

「何ですか?それ」
「あ、これ?」
王子の腕の中から出てきたのは、小さな黒い猫だった。
どうやら外から拾ってきたらしい。
泥と水にまみれ、寒そうに身体を震わせている。
「どうした?寒いのか?」
「何故猫なんて…」
「だって外はこの雨だぜ?可哀相じゃんか」
タオルで猫を包み、優しく擦りながら優しげな目で 愛おしそうに猫を見る。
その光景を見て、なんだかその猫が羨ましくなった。
王子にあんなに優しい目で見つめられるなんて。
今はあの猫が王子を独り占め状態だな…。

「でもな、それだけじゃないんだ」
 放っておけなかった。
「?」
「この猫…さ、悠に似てると思ったんだ」
 独りぼっちで、すごく寂しそうだったから。
「私、に…?」
 俺とお前が初めて会った時もそうだったんだぞ?
「そ」
よしよしと猫の頭を撫でると、にゃあ と嬉しそうに鳴く。
「ほら、これとかそっくりだ」
 お前は俺にしか わからないくらい わかりにくいけど
「…そうですか?」

俺にはわからない。
どこが似てるというのか。
俺は「にゃあ」なんて鳴いたりしないし。

猫にミルクをやるんだと王子はリビングへ向かった。
自分が準備すると申し出たが、自分で作りたいらしい。
その間俺は、俺に似てるという黒猫をじっと見つめていた。
猫の耳がぴくりと動き、顔を上げてこちらを見る。
「俺は王子のように優しくないぞ」
通じるなんて思ってないけど、何故か口が動いた。
すると猫はにゃあーと鳴きながら、俺に近づいてきた。
頭を俺の膝に擦りつけ、甘えるようにまた、にゃあ、と鳴く。
「お前は甘え上手だな」
俺は甘えるのは苦手だ。
どうやって甘えればいいのかわからない。
お前は誰に教わったんだろうな。
小さな身体を抱き上げ、首元を撫で擦ってやる。
すると目を細め、気持ち良さそうに首をあげる。
やはり理解できない。
この猫と俺は真逆と言っていいほど似てない。
だけど…一つだけ、俺と似てるところがある。

王子が大好きだということ。

*****
「ふぅー遅くなっちった」
ミルクを片手に部屋に戻ると思わず顔が綻ぶ。
悠の手の中で気持ち良さそうに寝ている猫。
そして壁に寄り掛かって寝息を立てている悠。
「やっぱりお前等そっくりだな」
くすりと笑い、太臓は悠に寄り掛かる形で眠りについた。

END